2018年12月23日、私はインドのコルカタにいた。
当時の私は仕事を1か月休み、アジア圏を放浪中であった。
タイヤカンボジア、ブルネイなどを廻り、どこの国でもリュックサック一つで不自由なく暮らせたことから、インドでもきっと大丈夫だろうと根拠のない自信に溢れていた。
しかしながら、空港からインドの地に一歩踏み出した瞬間、私の膨れ上がった自信はまるで風船の空気を抜くように一気に萎んでいった。
どこの国の空港にも、自分の知り合いが到着するのを待つ人たちがいるものだが、インドも例に倣って待ち人がたくさんいた。だが、そこで待っている人たちの表情が全然違うのだ。多くの日本人は柔和な顔をしていると私は思っているが、インドの人たちは基本的にクールな表情をしている。まだ海外経験の浅い私にとってはその表情に対し、非常に冷たい印象を持ったのだ。顔の彫りが深く、日本には無い浅黒い肌、大きく鋭い眼光の大人たちからの視線を一斉に浴びた途端、私はこれまでとは全く別の世界に来てしまった気がして、完全に委縮した。しかも昼ならまだしも、いきなり夜からのスタートだ。
一瞬本気で帰りたくなったが、ここまで来て引き返すのも違うと思い、とにかく早く宿を目指すことにした。と、ここでいきなりハプニングが発生した。宿から迎えに来るはずの送迎車が一向に来ないのだ。私と友人は途方に暮れたが、無料送迎があるはずなのにタクシーに乗るのは悔しいと感じた根っからのケチな私たちは仕方なく歩いて宿に向かう事にした。道中、約30分ほどの道のりであったが、とてつもなく長く感じた。
特に私が堪えたのは、日本とは全く違う、耳をつんざくようなトラックのクラクションだ。インドの国のトラック運転手はクラクションをガンガン鳴らす。どこの誰に向けているかも分からないがガンガン鳴らす。私は、夜道を歩きながらその音に毎度体を震わせていた。
15分ほど歩いたところで、私たちはとある屋台を見つけた。見ると、茶色い土の陶器のようなものにグレーがかったお茶のようなものを入れて売っている。後で知ったが、これがいわゆるチャイであった。しかし、前情報を何も勉強していかなかった私はそれが何かも分からず、手を出さなかった。
しばらくすると繁華街が見えてきた(とは言っても、夜中なので店は全て閉まっているが)。
そして店が立ち並ぶ一角に私たちが宿泊するホテルがあった。
内装も綺麗で申し分なく、ひとまず安心したが、またここでハプニングが起きた。なんと私たちが予約していたはずの部屋が既に埋まっていたのだ。意味が分からず、フロントスタッフに尋ねると、私たちの到着が遅く、無断キャンセルしたと勘違いし、他の宿泊客に部屋をあてがってしまったとのこと。
ここまで決死の思い(実際は大したことは無いが)で、歩いてきたのにそれは無いだろうと思ったが、その時の私は怒りよりも疲れが先行していた。代わりに私の友人がひどく怒り、強く不服申し入れをしていた。
その間、私はサービスでもらった飲み物を飲んでいた。この時飲んだものが、他ならぬインド到着後、第一杯目のチャイであった。
タイで睡眠薬を飲まされ、ひどい目に遭った私の友人は、一切手をつけないでいたが…
とにもかくにも、約1時間後、やっとホテルにチェックインできた私たちは各々冷水のシャワーを浴び(お湯が出ない)、泥のように眠った。
(つづく)
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